東京高等裁判所 平成12年(行ケ)293号 判決 2000年12月19日
原告
東陶機器株式会社
代表者代表取締役
A
訴訟代理人弁護士
窪田英一郎
同弁理士
B
被告
特許庁長官C
指定代理人
D
同
E
同
F
同
G
主文
特許庁が平成11年異議第72085号事件について平成12年6月27日にした決定を取り消す。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
1 原告の請求
特許庁が平成11年異議第72085号事件について平成12年6月27日にした決定を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 原告の主張(当事者間に争いがない)
(1) 特許庁における手続の経緯
原告は、発明の名称を「水洗式便器」とする特許第2830316号の特許(平成2年3月2日出願、平成10年9月25日設定登録。以下「本件特許」という。)の特許権者である。
Hは、平成11年6月2日、請求項1及び同2に係る本件特許に対して特許異議の申立てをし、特許庁は、これを平成11年異議第72085号事件として審理した結果、「特許第2830316号の請求項1及び2に係る特許を取り消す。」との決定をし、平成12年7月17日にその謄本を原告に送達した。
(2) 本件決定の理由の要旨
本件決定の理由は、要するに、本件発明には進歩性がなく、本件特許は特許法29条2項に該当するというものである。
(3) 原告は、本訴が係属中の平成12年8月10日、明細書の訂正をすることについて審判を請求し、特許庁は、これを訂正2000-39090号事件として審理した結果、同年10月17日に上記訂正をすべき旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし、これが確定した。
(4) 本件訂正審決による訂正の内容
(イ) 本件訂正審決による訂正前の特許請求の範囲は、次のとおりである。
【請求項1】洗浄水の供給を制御する1または2以上の弁機構および大気開放弁をユニット化したバルブユニットを便器本体に備えたことを特徴とする水洗式便器。
【請求項2】前記バルブユニットはベースプレートを介して便器本体に取り付けられるとともに、前記ベースプレートに前記バルブユニットから排出される洗浄水をボウル部へ導くための導水路を形成したことを特徴とする請求項1記載の水洗式便器。
(ロ) 本件訂正審決による訂正後の特許請求の範囲は、次のとおりである(下線部が訂正された箇所である。)。
(1) 洗浄水によって便器内の封水と汚物とを加勢し、該封水と汚物とが所定距離だけ搬送される勢いで、便器外へ排出する水洗式便器であって、前記洗浄水の供給を給水圧にかかわらず所定の流量に制御する1または2以上の弁機構および大気開放弁をユニット化したバルブユニットを便器本体に備えたことを特徴とする水洗式便器。
(2) 前記バルブユニットはべースプレートを介して便器本体に取り付けられるとともに、前記べースプレートに前記バルブユニットから排出される洗浄水をボウル部へ導くための導水路を形成したことを特徴とする請求項1記載の水洗式便器。
(5) 特許法29条の規定に違反してなされた特許であることを理由に特許を無効とした審決の取消しを求める訴訟の係属中に、当該特許に係る特許請求の範囲の減縮、不明瞭な記載の釈明及び誤記の訂正を目的とする訂正審決が確定したので、本件決定は、結果として、判断の対象となるべき発明の要旨の認定を誤ったものであり、この誤りが本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、本件決定は、取消しを免れない。
3 原告の主張に対する被告の認否
(1)ないし(4)は認める。
4 上記争いのない事実によれば、本訴請求は理由があるから、これを認容し、訴訟費用の負担については、上記事情に鑑みれば原告に負担させるのが相当であるから、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法62条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 山下和明 裁判官 宍戸充 裁判官 阿部正幸)